セル型構造地下貯水槽

貯留材を遮水シートで包んで形成する地下貯水槽の場合、遮水シートが持つ弱点を補って、いかにして水漏れの発生がない貯水槽を築くかが大きな課題となります。一般的に直面する第1の問題点は、地下埋設時の埋戻し等に伴って発生するピンホール問題にどう対処するかです。

そして、第2の問題点は遮水シートとパ イプの接合部分に発生する、応力集中による破損をどうやって回避するかということです。さらに、シートの溶着不良によって発生する水漏れを、いかにして防止するかという問題もあります。これらの課題を構造的に解決して完成したのが、セル型構造地下貯水槽です。

特長

1. 二重の遮水構造の採用により、土砂の埋戻し等に伴って発生する、ピンホールからの水漏れ問題を解決しました。

2. 逆流防止弁を利用することにより、シートとパイプの配管接合部に発生する、応力集中による破損の問題を解決しました。

3. 内部構造をセル化(ユニット化)することによって、水漏れテスト等の品質管理を容易にしました。

基本構造

50㎥セルの場合

これよりも小型の10㎥セル、20㎥セルのような場合は、底盤用逆流防止弁を省略するなど、内部構造が簡略化されます。

基本構造

導水部の形成

セル型構造地下貯留槽では、内側遮水シートによって囲まれる貯水部が、外力によって破損するのを防止するため導水部を設け、雨水をここを経由して貯水部へ導きます。

底盤面と側面に設けられた導水部は互いに連通するように形成されますが、底盤面の導水部は、ほぼ底面全体にわたって設けられるのに対し、側面の導水部は通常巾1m内外で設置し、その両側は耐圧保護板(発砲倍率30倍程度のスチロール板)で形成します。

側面導水部・底面導水部

セル構造のいろいろ

セルはcellから由来したもので細胞の意味です。逆流防止弁を経て、雨水が貯水部に流入する仕組みが生体細胞の営みを連想させることから、このような名称を採用しました。

単一セルと複数セル

内部が単一のユニット(セル内貯水部)で構成されるものを単一セル、2つ以上のユニット(同)で構成されるものを複数セルと呼ぶことにしますが、これらの商品構成は次のようになっています。

単一セル標準製品・・・ 貯水容量、1㎥、2㎥、3㎥、10㎥、20㎥、50㎥のものがあります。
このうち、1㎥〜3㎥のものをファミリーダムと呼んでおり、これらは通常、当社工場で組立て完成したものをトラックで現場へ搬入します。

複数セルの製品・・・50㎥を超えるような大型のものは通常、単一のユニットを複数併置して全体を形成します。

セル構成の例
貯水のみを目的とする場合

貯水のみを目的とする場合(いづれも平面図)

貯水と浸透を目的とする場合

貯水のみを目的とする場合(いづれも平面図)

ファミリーダム(FAD)

ファミリーダム(FAD)

セル型構造地下貯水槽(CST)のうち、小規模なものを標準化してファミリーダム(FAD)と名付けました。FADには1t用、2t用、3t用の3種類がありますが、通常これらは、工場で組み立てて防水検査を行い、完成品をトラックで運んで現場へ搬入します。

施工例

施工中の大規模地下貯水槽

施工中の中規模地下貯水槽

小規模なものは工場で組み立てて現場に搬入し、クレーンで吊り下ろす

UN水貯留システム(建設中)

50㎥槽

JICA事業

1,000㎥槽

貯留材「アクアパレス」

地下貯留槽の建設において近年、コンクリート製に代わるものとして、プラスチック製の「貯留材」と呼ばれる部材を組み立てて形成する工法が普及してきましたが、アクアパレスは、この種の工法に属するものです。
ただ、このアクアパレスは従来の籠状等の貯留材とは異なり、使用目的や現場条件に応じて構造を変えることができるなど、従来工法にはない、多くの優れた特徴を持っています。

構造

構造

仕切板間隔やパイプの強度(肉厚、直径)を変えることによって、
耐圧性、耐震性などの性能を変え、選択することができます。

・仕切板は相互に嵌合し、強固な平面を形成します。

・パイプの中にも雨水は流入し、空隙率(外形体積に対する実際に水が貯留される空間の体積)は90%以上と高率です。

特長

アクアパレスと他の貯留材の性能比較

  構造的多様性 耐圧性能 耐震性 空隙率 高さ方向への積上げ 内部の点検・清掃
従来の貯留材 ない 一定 一定 高い 制限あり 不可能に近い
単一性能であるため、柔軟な現場対応がとれない 通常、自動車荷重T-25対応を目標に製作されている 通常、レベル2の地震に耐えるものになっている 一般に90%以上で、単一の空隙率 通常、4mを超えると不安定化するものが多く、制限があると判断される いずれも不可能か不可能に近い
アクアパレス あり 増減可能 増減可能 高い 制限なし 可能
使用目的や現場条件に応じ構造を変え、選択できる T-25をクリアすることはもちろん、T-6、T-14など必要に応じて構造を選択できる レベル2の地震に耐えることはもちろん、さらに性能を高めることもできる 90%以上だが、貯水槽が大きくなるほど空隙率が拡大する 特に制限がなく、10mを超える超大型の貯留槽にも対応できる 内部を点検し、必要に応じ清掃や補修が可能

クレーンによる吊上と移動

50㎥程度までのものは、クレーンによって吊上げて移動し、設置場所に吊降することが可能です。

このことは、アクアパレス槽が構造的に強靱なことを証明しています。

クレーンによる吊上と移動
クレーンによる吊上と移動